リビングカタログ
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洗面スペースやトイレなどの水まわりは、家族が毎日出入りする日常使いの空間であると同時に、大切なお客さまを迎え入れる「ハレ」の場にもなります。プライベートとパブリックという相反する要素を合わせ持つだけに、住まいづくりでは特に熟慮すべき空間のひとつといえるかもしれません。そんな水まわりのプランニングで大切なのは、「その空間でどんな時間を過ごしたいか(過ごしてほしいか)」という要望を明確にすること。目指すはサロンのような安らぎとくつろぎを感じさせる、ホスピタリティ溢れる水まわりです。まずは、ひとつひとつのパーツをこだわって選んでみましょう。ここにご紹介するのは、石膏型を用いた「鋳込(いこ)み※」による磁器製手洗鉢のシリーズ。ブルーグレーの花模様がどことなくノスタルジーを感じさせる「オールドイングランド」、そして、アンティーク雑貨を思わせるクラシカルな模様が印象的な「コレクティブルズ」、どちらも温かみのある白地の上に施された繊細な絵付けが、ロマンチックな雰囲気を醸し出します。陶磁器の代名詞「セトモノ」の発祥の地として知られる、愛知県瀬戸市。平安時代から現代にいたる1300年以上もの間、途絶えることなく受け継がれ、世界にその名を轟かす「瀬戸焼」は、伝統的なものから工業製品までじつに多彩な陶磁器のバリエーションを誇ります。一般に「セトモノ」といえば、“大量生産の日用雑器”というイメージがあるでしょう。ところが、その製造の現場で出会ったのは、“手頃な焼き物”という認識を覆す高度な職人技と、専用型を用いるからこそ可能になった精緻なデザインによる、魅力的な製品の数々でした。ふだん使いでありながら、こだわりと個性がキラリと光る…、まさに「ケ」と「ハレ」を兼ねた水まわり空間にふさわしい手洗鉢は、いったいどのような工程を経て生まれるのでしょうか。サロンのような水まわりを演出する、こだわりの手洗鉢。「鋳込(いこ)み」だからこそできる、繊細なデザイン。※よく知られている手びねりやロクロを使った技法とは異なり、「鋳込(いこ)み」はあらかじめ用意した型を使うことで、複雑な造形や繊細なデザインといった精度の高い焼き物を大量につくり出すことが可能です。052

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