プランツカタログ
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168P01ギリスやフランスを旅したとき、はっとするような光景に何度も出会いました。それは小径沿いに椅子を並べただけの、庭とも呼べないスペースだったり、アプローチにさりげなく置かれたテーブルだったり…。日が暮れるのが遅いヨーロッパでは、平日でも仕事後のひとときを、そのさりげない屋外のスペースでくつろいだり、食事を楽しんだり。なんて贅沢な時間、なんて上手な空間の使い方だろうと思いました。今でも私が庭を含めて空間をコーディネートするときの、原風景として心に刻まれています。暮らしをもっと心地よく、楽しくしたいと考えたとき、私の場合、最終的に行き着くのはこのさりげない景色なのだと思います。私は初めから庭の仕事を目指したわけではありません。もともと建築が大好きで、その内も外も含めた空間をコーディネートするのが好きなんです。心地よく暮らすためには家の中をどんな間取りにしたらいいかを考えるのも好きで、庭や家まわりについてもその延長みたいな感覚です。マンションから一軒家に移ったのを機会に、一昨年の秋から自分の庭をつくり始めました。ある意味、実験的な庭でもあります。コンパクトな庭にはどんな植物を植え、どのように管理をすればいいか、経年変化する素材の状態を観察したり、まさに自身で経験している最中なので、それをお客さまの庭づくりに生かしていきたいと考えています。たとえば、庭をつくるとき、まず大きな木を植えますが、初めから大きな木を入れてしまうと自分で手出しができなくなり、剪定などの管理も植木屋さんの手を借りなくてはいけない。でも、小さな木から始めれば、庭に適したサイズに自分で調整できるし、何より木に触れて自然を身近に感じる時間が楽しめます。望むサイズに自分で管理できる、そんな庭ができないか、自分の庭で日々実践を重ねています。また、ハーブなど日々の生活で利用できる植物を取り入れることで、植物と暮らしの接点をもっと殖やしていけたらと考えています。そうすれば植物にも愛着がわき、庭ともっと仲良くなれると思います。イを形にする仕事1File:旅先で見つけた民家のアプローチ。植物に囲まれたさりげない空間だが、ここで食事を楽しむ時間は本当に気持ちがよいだろうなとうらやましくなった。これも旅先で心に沁みた1ショット。建物の前の通りに椅子を並べただけの空間が、住人にはくつろぎの時間を過ごせる場所になっていることに驚く。兵庫県西宮市在住。「vヴィスープルiesouple」代表。ガーデンのみならず家の内外をトータルにコーディネートする空間デザイナー。ヴィスープルはフランス語で「しなやかな生活」という意味。OL時代にインテリアコーディネーターの資格を取得。建築意匠設計事務所勤務を経て外構・庭園設計施工会社に移り、主に設計を担当し、2級建築士の資格も取得。2001年に独立と同時に大阪芸術大学に入学。2014年には自宅兼事務所の小さな庭を「garden life labo」として試験的な庭づくりの場にしている。今後は庭づくりに限定せず、「自然を感じる暮らしづくり」を具体化するデザイナーとして、さらに広い視野で活動したいと意欲満々。ホームページ:http://www.soupledesign.com/眺めるだけでなく、植物を暮らしの中で利用するそれが「自分で管理できる庭」につながる

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